Label: sagome
Format: CD
J.TRIPPによる『Hylic』は、ミレニアム以降の時代が孕む緊張感を凝縮し、私たちを「未知」の境界線へと連れ出したかと思えば、再び内面へと押し戻し、人工的な親密さの中に安らぎを見出させます。
聴き始めは、何かを掴みきれないような、ある種の当惑を覚えるかもしれません。しかし聴き進めるうちに、このアルバムは、私たちが知る現実が新たな何かへと変容していく、大都市のシミュレーションのための統一されたサウンドトラックのように感じられてきます。ある時は柔らかく広がりを見せ、またある時は鋭く歪んだ音を響かせる。その音世界は都市の風景を想起させつつも、フォークやポップスの感性も顔を覗かせます。音楽が持つ人間的な温もりが宙に浮遊する一方で、不明瞭でサイレンのようなメッセージを紡ぐ歌声が、過酷な環境下で私たちを導くメロディへと繋ぎ止めてくれるのです。